
- 作者: 丸幸弘
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2017/09/13
- メディア: 単行本
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一言で言えば、最高の本だ。
なんと表現すれば伝わるのか分からないが、タイトルに違わず、私の中にある「ミライを変えたい」という思いを強くしてくれる本だった。
はじめに
この記事の立場を明確にするため、まずは自己紹介をしておく。
- 私自身はベンチャーに所属したことはなく、一般的なSI企業で働くいわゆる普通のエンジニアである。
- ただ、この業界にいるからには「ベンチャー企業」や「シリコンバレー」という言葉に憧れを持っている。
- 最近は今所属している会社で新しい活動を実施しようとしており、そのために参考にできる情報を探した結果この本に辿り着いた。
以降は、こんな私から見た本の内容を紹介する。
著者の情報
リバネス代表取締役CEO丸幸弘 | 知識プラットフォームのリバネス-Leave a Nest-
2002年、大学院の時点でベンチャー企業「リバネス」を設立。
以降、世界中の研究者の知を集める「知識プラットフォーム」を始めとする多数のプロジェクトを運営。さらに、これまでに30社以上のベンチャー企業の立ち上げにも携わっている。
この本の対象者
この本は「目的を達成するために、新しい物理的な『物』を生み出そうとするベンチャー企業」に焦点を当てている。
とはいえ、ベンチャー立ち上げに関して著者の豊富な経験に裏付けされた情報が詰まっており、事業内容に関わらず応用できそうだと感じた。
また、例えば「新規事業創出」といった自社内で新しい事に挑戦する人にとっても、行動の指針となる話が多く含まれていた。
本の内容
内容としては、タイトル通り「モノづくりベンチャー指南書」というイメージで、著者の経験を元にした「ベンチャー企業を設立する時に押さえておきたいポイント」が整理されている。
その中でも、特に私の印象に残った点を3つ紹介する。
フィニッシュを考えてスタートする
第8章に「フィニッシュを考えてスタートしよう」とある通り、新しい活動を始める際には最終的にどこに向かいたいのかを明確にして行動する必要がある。
例えば、著者が立ち上げを支援したユーグレナ社では「人と地球を健康にすること」を目的に掲げている。
www.euglena.jp
この会社は現在「ミドリムシ」を使った活動を主としているが、その社長である出雲氏は本書の中でこう発言している。
「いまはミドリムシこそ最高の答えだと思っているけれど、ミドリムシを超える生きものが見つかれば、オレはその"超ミドリムシ"をやる」
本文35Pより
新しい活動にかけられるリソースは、いつも少ない。
だからこそ目的を明確にして、常に最善の手段を探っていくことが重要になる。
道を切り拓くのは創業者の"熱い想い"
つまり「自分が『解決したい』と思う課題を見つけよ」ということだ。
この本の中で著者は、ベンチャー企業が生まれる一連の流れに「QPMI」という名前を付けて整理している。
Question 課題を見つけ出す
Passion 課題の解決に向けて「熱」を持つ
Mission 課題の解決こそ我々のミッションだと考えるチームを作る
Innovation チームの推進力で新たな価値を生み出す
本文21Pより
この流れの土台にある Q「課題を見つけ」、P「その解決に向けて熱を持てるか」という点が非常に重要であり、その2点があるからこそ周囲の人々を動かすことができる。
これは一般的な企業においても同じで、何かを変えるために自分の上司やその上の人間を動かすためには、それ相応の熱意が必要となる。
そのためにも、まずは自分が「何を解決したいのか」を明確にしておきたい。
「我」を通すことができるか
丸「でも、出雲なぁ、ミドリムシに何かが混入したら全滅するよ。1円にもならなくなる。クロレラとかスピルリナをつくっておけば、他が売れるじゃないか」
出雲「イヤだ。俺はミドリムシが好きだ」
この段階で、もうダメだとこちらが根負けをする。
丸「わかったよ。ミドリムシでやろう。でもリスクはあるぜ」
出雲「大丈夫。ミドリムシは大丈夫」
本文239Pより
例えどんなにデキる人間を集められても、ある時「不安な意見」に目がいき、立ち止まってしまう可能性はある。
ただ、その「不安」が正しいのか、それとも間違っているのかは実際に行動してみるまで誰にも分からない。
そんな時、後に後悔を残さないためにも、通したい「我」があればとことん通し続けられる強さを持っておく必要がある。
さいごに
このように「新しい活動を始めたい人」に対して様々な角度から助言を与えてくれる本なので、そんな活動をしている、もしくはこれからしてみたいと感じている方がいれば、是非一度手に取って頂きたいと感じた。
ちなみに私は昨日この本を読み、著者の丸さんの考えをもっと沢山知りたくなり、結果としてamazonで他の著書も購入することになってしまった。
明日以降、会社でも少しずつ布教していこうと思う。
おまけ
この本について1点だけ不満を上げるなら、それは「モノづくりベンチャーの創成期(シードステージ)について『この時期、立ち上げメンバーはほとんど無報酬』と当たり前のように書かれている事だ。
これは実際に著者の見ている光景なのだろうし、現状は当たり前なのかもしれない。
ただ、個人的にはそんな事が「当たり前」であって欲しくはない。
世の中にあるお金は有限である。それでも私は、このようなモノづくり産業への投資について日本は国を挙げて全力で取り組んでいくべきだと思っているし、そんな「未来への投資」こそが当たり前な社会にしていきたい。
そのためにも、新しい活動に挑戦することの重要性を一人でも多くの人に伝えていこうと思う。