先日JRに乗っていた時、入口ドア上の画面にドラクエ最新作のCMが流れていた。
そこに書いてあった
「あの待望のドラクエシリーズ最新作」
という文章を見て一瞬で「ん??」と思ったことがあり、それを書いてみる。
「あの」という言葉の意味
「これ」は自分の手元に在る物。
「それ」は相手の近くに在る物。
両方とも「物体固有の名詞を用いずに相手に対象物のことを指し示す言葉」である。
この2つの言葉を使う場合、人間はジェスチャーなどを用いて「対象物」を相手に伝えることが可能だ。
それは選択肢が「自分or相手の身の回りに在る物」に限られるため、おおよその見当が付きやすいからだと思われる。
だからお互いが初対面だったり、意識の疎通をした事が無い相手でもあまり難しく考えずに使える。
では「あれ」という場合はどうだろう。
「あれ」とは自分や相手から遠くに在る物を示す言葉だ。
つまり「これ」や「それ」と比べて受け手から見た選択肢が膨大に多くなる。
例えジェスチャーを使って対象物を指さしたとしても、その時の文脈やお互いの立ち位置などにより、相手に情報を伝えるのは難しい。
そう考えると、「あの」という言葉は共通認識が難しい言葉だと言える。
「あの」ドラクエシリーズ
冒頭の文章に戻って考えてみよう。
今回の「あの」が表示されたのは、人間が存在しない画面の中だ。
だから誰も、何も指し示すものが無い状態で「広告主」と「読み手(電車に乗っている客)」との間で無意識な意思の疎通が必要となる。
にも関わらず、「あのドラクエシリーズ」という文章を見て「スクウェア・エニックスのドラゴンクエストシリーズ」が連想できない人は恐らくほとんど居ない。
つまりそう思えるくらい「ドラクエシリーズ」は「あの」という言葉に相応しい有名さを持っている気がした。
例えばこれが「あの佐藤さん」だったら「誰?」となるだろうし、ゲームでも「パネルでポン」とか「ファイアーエムブレム」くらいの「有名だけど誰でも知ってるレベルではないタイトル」に使われていたとしたら、「あの」という言葉に若干押し負けている感が出そうだ。
そう考えた時、私はドラクエやFF、マリオや星のカービィみたいな「おそらく誰でも1度は目にしたことがある作品」というのは凄いものなんだな、と改めて感じた。
(ここで「私もそういう作品を作りたい」とか言えるとカッコいいのだが、残念ながらこの文章にはそんなに上手いまとめは無い。)
(もちろんゲーム界隈で言えば「あのパネルでポン」は十分通じる言葉だと思うが、老若男女入り混じる満員電車の中で流しても「違和感が無い」と感じるタイトルは、やっぱり凄いのではないだろうか。)
さいごに
実は、私が冒頭の文章で一番最初に感じたのは「有名作品の凄さ」ではなく「文章の構成がおかしい」だった。
「あの待望のドラクエシリーズ最新作」という単語の並びを見ると、大抵の人は「あの待望の」という所に関係を見出そうとするだろう。
でも上記に書いた通り、「あの」という言葉を使う時には対象が明確になっていないと伝わらない。
だから本来「あの」が示すのは「ドラクエ」の方でなければおかしい。
つまり文章としては
「あのドラクエシリーズ待望の最新作」
という並びでなければおかしいのではないだろうか。
と、ツッコミを入れる記事を書こうと思い立ったはずなのに、気づけばドラクエすげぇという内容を書かされてしまっていた。
やっぱりドラクエってすげぇよな。
最後までチョコたっぷりだもんな。