皆さんは、自分の直感を信じているだろうか。
私は昨日「直感を信じて良かった」と思える出来事に遭遇した。
手作りの、小さな船
昨日は19時頃に仕事を終えた。
もう空は暗くなり、道端のお店が夜の街を照らし始める時間だ。
私は電車に乗って、いつも通り帰路につく。
そのまま最寄りの駅で降り、何も考えずに家に向かって歩き始めた。
その時だ。
たくさんの人が列になって行き来する歩道の、その真ん中の部分の足元に、何かが落ちている。
近づいてみると、それは見るからに手作りで、とてももろそうな『船』だった。
船体は厚紙で作られ、その中心からはストローの柱が1本伸びている。
柱の上には大きな帆。これはおそらくクリアファイルだ。それも少女雑誌の付録についてきそうな、ピンク色で、女の子のキャラクターが描かれたもの。
「こんなところに、子供が捨てていったのかな」
私は一瞬そう思ったが、人混みに流されてそのまま通りすぎてしまった。
しかし、近くの赤信号に止まった時、とある疑問が浮かんだ。
「もしかして、あれは子供の『落としもの』なんじゃないか?」
今はまだ、皆が避けて歩いているおかげで船は無事だった。でもあのまま放置しておけば、いつか誰かに踏まれてしまうだろう。
だとしたら、戻るべきか?
でも自分が戻ったところで何ができるだろうか。
私が持って帰っても意味が無い。
持ち主が分かれば返してあげたいけど、少なくとも近くには居ないようだ。
じゃあ拾っても無駄か?
いやでも、ついさっき落としたんだとすれば、落とし主はすぐに戻ってきてくれるかもしれない。
だったらせめて、できるだけ人に踏まれないよう、道路脇のガードレールに立てかけておくことくらいはできるんじゃないか?
幸い今夜は風もない。
一晩くらいなら、飛ばされずに留まってくれそうだ。
・・・と色々な妄想をするうち、いよいよ信号が青になった。
今はサラリーマンの帰宅時間。
もちろん前から後ろから、多くの人が歩いてくる。
私はまたもや流されるようにして、帰る方向に歩を進めてしまった。
しかし、やっぱり、忘れられない。
「あの船は、誰かの落し物だ」と、自分の直感がそう言っている。
私は悩むように何度も後ろを振り向いた後、ついに決心した。
体を翻し、船の方に向かって歩いていく。
「もし、もう踏まれていたらどうしよう」
もちろんその不安もあるが、それはその時に諦めるしかない。
でもまだ無事だったら、そっと安全な場所に移動しておこう。
そして私は、船の元まで戻ってきた。
急いで駆け寄り、その場にしゃがみ、柱のストローをつまんで持ち上げる。
と、その瞬間。
「あー!○○ちゃんのー!!」
目の前の方向から、小さな女の子の大きな声がした。
まだあどけない喋り方で、名前の部分はハッキリ聞きとれない。
でも、それは確実に「探し物を見つけた時の声」をしていた。
私は驚いて顔をあげると、そこには幼稚園児とおぼしき少女と、その母親がこちらに歩いてくる姿があった。
なんてことだ。
本当に、落とし主が見つかってしまった。
道路脇に移動するはずだった私は、目の前の船をそっと持ち上げると、走り寄ってくる女の子にそのまま手渡して言った。
「よかったね」
ビックリしすぎて、それしか言葉が出なかった。
女の子は喜んでいたような気がする。でも表情はあまり覚えていない。
唯一覚えているのは、お母さんが「ありがとうございます」と言ってくれたこと。そして女の子が、お母さんに諭されながらこっちを振り向き、小さな声で「ありがとう」と言ってくれたことだけだ。
直感に従ってみよう
誰かの命を助けてはいない。
何かお金になった訳でもない。
ただ、自分の中の大切なものを失わずに済んだ。
そんな気持ちだけが残っている。
今まで私はたくさんの落し物を無視してきた。
ついこの前、駅の階段にシュシュが落ちていた。
その前にもキーホルダーや、小さなぬいぐるみを見たこともある。
でもそんな時、「落し物かな?」という直感よりも「あれは大したことないものだ」という思い込みが勝り、何も行動しないことが多かった。
自分にとっては大した意味が無くても、持ち主にしてみれば大切なものだということは往々にしてある。
だとしたら、その場でああだこうだと決めつけるより、自分の直感に従ってみることの方が大事なんじゃないだろうか。
だから私は、自分の直感を信じ、何かを助けられる人間になろうと思う。
あなたは、直感に従って生きていますか?