本屋で何気なく手にとったこの本。
まさか、こんなに面白い本だとは思ってませんでした。
一言で表すと「虫好きの、虫好きによる、全ての人に向けた本」です。
虫好きの、虫好きによる、全ての人に向けた本
この本を面白くしている要素は、大きく分けて2つあります。
一つは「虫の生態系が多様で面白い」ということ。約230ページという短い中で、彼らの「暮らし方」、「社会生活」そして「ヒトとの関わり方」という3つの観点から、様々な情報が紹介されています。
この本が気になった人は、是非一度本屋で手に取り、最初のカラーページだけでも読んでみてください。
数ある昆虫の中から「よりすぐりの例をあげている」と豪語するこの本の、その中でも特に面白い例だけが、カラー写真付きで紹介されています。
たとえば、1ページ目に書いてあるのはこちら。
動物界最速の動きで大顎を閉じるアギトアリ。大顎を開けて歩き回り、つけねの中央部にある毛に獲物が触れると、時速230キロメートルの速さで閉じる。
(本文1ページより)
ここで紹介されているオキナワアギトアリは、体長9~10mm。
人間の指先程度の小さな生物が「世界最速で動く」という事実は恐ろしくもありますが、同時に、昆虫の持つ「無限の可能性」をありありと感じさせられます。
この他にも『摂氏100度のおなら』『磔の刑』『ゾンビを操る』など、言葉を見ただけでも目を引いてしまう生態が数多く紹介されています。
もう一つのポイントは「著者の丸山先生による考察が面白い」ということです。
丸山先生は「夏休み子供科学電話相談」の回答者としても知られる有名な方。
この本が「ただ淡々と事実を述べるだけ」でなく、読み物としてこんなに面白くなっているのは、ひとえにこの丸山先生のユーモアのおかげです。
本書を読んで、私が一番『名言』だと思ったのはこの言葉でした。
つくづく昆虫に既成概念は通用しない。
(本文197ページより)
知識豊富な先生にとってさえ、想定外の進化を遂げている昆虫たち。
その豊かな生き方に触れてみたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。
まとめ
個人的評価:★★★★★(5/5)
一応言っておきますが、本当に虫が苦手なら、手に取ることすらオススメしません。
この本は虫と、虫が大好きな先生の考察だけでできています。
逆に、今は苦手でも「小さい頃は大丈夫だったんだけどなぁ・・・」と思っている人が読めば、虫に対する『好奇心』を思い出すことができるでしょう。
虫は、人間の理解の外に生きています。
理解できないからこそ面白く、理解できないからこそ、近くに居ると気持ち悪さを感じてしまう。
そんな彼らの生き方を知り、新しい発見をしてみませんか?